ニュースの概要
アジア太平洋地域でホテルやリゾート、サービスアパートメント、ラグジュアリーレジデンスを運営するONYX Hospitality Groupが、創業60周年を記念したキャンペーン「More of What You Love」を始めた。複数の企業や団体と組み、旅行者が自分の好みに合わせて選べる体験を用意するという。宿泊プランの値引きを前面に出すのではなく、旅行者の関心や暮らし方に寄り添う姿勢を示した発表である。ホテル単体ではなく、滞在の前後や周辺の過ごし方まで含めて提案する構えが読み取れる。節目の年に、数を増やすより選び方の質を高める方向へ舵を切った点が特徴だ。
引用元: ONYX Hospitality Group、60周年で旅行者向けの選別型体験を拡充(Asia News Network)
分析・見解
宿泊先を「選ぶ」から「好みに合わせて組み立てる」へ
旅行者の選択基準は、客室の広さや価格だけでは決まらなくなっている。食、健康、芸術、買い物など、自分が大切にしたいことを軸に旅先を決める人が増えた。たとえば同じ温泉地でも、料理を目当てに行く人と、静けさを求める人とでは、選ぶ宿がまったく違う。今回のキャンペーン名は「好きなものをもっと」という意味合いで、こうした変化を正面から受け止めている。宿泊を売るのではなく、好みに合う時間を売るという発想の転換が見える。比較サイトで価格が横並びになる中、宿が独自の物語を持つことは差別化の数少ない手段である。
多様な宿泊形態を持つグループだからできる提案
同グループはホテルとリゾートに加え、長期滞在向けのサービスアパートメントや高級住宅も抱える。短い休暇を楽しむ人、数か月滞在する出張者、暮らすように過ごしたい人では、望む形がまるで違う。幅広い顧客を持つ事業者ほど、全員に同じ特典を配っても響きにくい。複数の提携先から選べる形にすれば、利用者が自分で組み合わせを決められる。実際、長期滞在者向けの宿では、近所の飲食店や洗濯、運動施設との連携が満足度を左右する。多様な宿泊形態を持つことが、そのまま強みになる設計だ。
他社との協業が価値を生む理由と限界
ホテルが自前で用意できる体験には限りがある。外部の飲食店、体験事業者、移動手段、健康関連の企業と組めば、短期間で品ぞろえを広げられる。航空会社とホテルがマイルで結びつく仕組みと同じく、相手のファンを自社に呼び込む効果もある。ホテル側は、誰と組むかを公表することで、自社の価値観も同時に示すことになる。一方で、提携先の質にばらつきがあると、ホテル全体の印象まで傷つく。選ぶ側の目は厳しい。数をそろえるのではなく、「厳選された」と感じてもらえる水準を保てるかが問われる。
60周年という節目が持つ意味
60年続く企業は、景気の波や旅行が止まった時期を乗り越えてきたことになる。周年事業は、過去の実績を誇るだけの催しになりがちだ。しかし今回は、これから来る旅行者に何を渡すかを軸にしている点が興味深い。歴史を、新しい顧客へ語りかける材料として使っている。アジア太平洋では中間層の旅行需要が広がっており、若い世代に名前を知ってもらう機会としても働くだろう。周年の話題性が薄れた後に、予約や滞在中の利用がどれだけ残るかが本当の成果である。ただし、一過性で終わるか、通年の仕組みに育つかで評価は分かれる。
ビジネスへの影響
自社の強みを「選べる形」に分けて見せる
宿泊業に限らず、顧客の好みが分かれる業界では、商品を一本化せず、選択肢として並べる工夫が効く。まず自社の顧客を三つほどの層に分け、それぞれが何に時間とお金を使うかを聞き取るとよい。そこから、自社だけでは足りない部分を洗い出す。たとえば朝食付きの宿泊に、地元の料理教室や美術館の入場を組み合わせられるようにするだけでも、客室単価に頼らない収益が生まれる。小さく試し、反応のよい組み合わせを残すのが現実的である。
提携先は数より相性で決める
提携先を選ぶ基準は、知名度より、顧客の期待を裏切らない品質である。契約前に自分たちで体験し、苦情が出たときの窓口と責任の分担も決めておく。小さな事業者が相手なら、予約が集中したときの受け入れ余力も確認したい。提携が増えるほど、案内する側の説明負担も増える。現場の従業員が内容を説明できるよう、事前の研修と簡潔な資料が欠かせない。
周年や節目の企画は成果の測り方まで決める
話題づくりで終わらせないため、利用率、再訪率、提携先ごとの売上への貢献を最初に数字で決めておく。半年後に見直し、利用の少ない体験は入れ替える。こうして得た記録は、次の企画の材料にもなる。顧客が選んだ内容そのものが、最も確かな市場調査である。予算が限られる中小の宿でも、地元の一社と組んで始めるだけで検証はできる。成功の目安を社内で共有しておけば、判断が早くなる。