ニュースの概要
韓国の旅行会社が、一般向けの海外パッケージ旅行に頼る形から、企業を顧客とする事業へ軸足を広げている。教員ツアーは企業専用ブランド「教員ツアー RISE」を始め、表彰旅行、産業ベンチマーキング(=他社や他国の先進事例を見て学ぶ視察)、プレミアム旅行、文化探訪・海外研修、テーマ型休暇、国内オーダーメイド旅行の6分野を用意した。企業ごとに目的や要望が違うため、企画から現地での運営までを個別に組み立て、専門ガイドも付ける方針だという。記事にはHanaToの名前も見られ、旅行業界全体で法人需要を取り込もうとする流れがうかがえる。
引用元: 企業向けの表彰旅行・研修・出張管理へ、旅行会社がB2B事業を拡大(Segye)
分析・見解
個人客の波を、法人の目的ある旅で補う狙い
個人向けのパッケージ旅行は、為替、燃料費、景気の影響を強く受ける。価格比較サイトの普及で、同じ行程なら安いほうが選ばれやすく、利益も薄くなりがちだ。一方、企業の旅行は目的がはっきりしている。予算も年度計画に組み込まれるため、需要が読みやすい。
教員ツアーが専用ブランドを作った意味は、この違いにあるだろう。個人客向けの商品と同じ名前で法人営業をすると、担当者は『観光会社に仕事を頼んでいる』と感じにくい。ブランドを分ければ、旅行ではなく『人材施策の相談先』として見てもらいやすくなる。
六つの商品分野は、社内の別々の予算に届くよう設計されている
六つの分野を並べると、社内の財布が違う部署にそれぞれ届く形になっていることが分かる。表彰旅行は人事や営業の報奨予算。産業視察や海外研修は教育研修費や経営企画の調査費。テーマ型休暇は福利厚生。国内オーダーメイドは、海外渡航が難しい企業の受け皿になる。窓口を一本にしておけば、担当部署が替わっても取引が続きやすい。
差がつくのは手配の速さではなく、行程の設計力と現地の人材
航空券やホテルの手配だけなら、今はオンラインで誰でもできる。旅行会社が価値を出せるのは、目的から逆算して行程を組む部分だ。たとえば工場視察なら、通訳がいるだけでは足りない。業界の言葉が分かるガイドがいて、初めて訪問先で踏み込んだ質問ができる。
日本でも、JTBなどの大手が企業向けの部門を持ち、会議、報奨旅行、国際会議、展示会の総称であるMICE(マイス)を一括で請け負ってきた。欧米では出張管理の大手が、出張費のデータ分析まで売りにしている。今回の動きは、韓国の旅行会社がこうした『法人向けの総合サービス』に近づこうとする試みと読める。
景気に弱い点と、成果が見えにくい点が最大の課題になる
法人需要は安定して見えるが、業績が悪化すると最初に削られるのは表彰旅行や研修旅行である。コロナ禍でも法人の移動は急減した。個人向けの落ち込みと同時に起きるなら、リスク分散としては弱い。
もう一つは成果の測り方だ。旅行の価値は、最終日の満足度よりも、帰社後に社内で語られる話の量と質で決まると考える。旅行会社が参加者アンケートだけで終わらず、受注額や定着率との関係まで一緒に検証できれば、単なる手配業者から一歩抜け出せる。
ビジネスへの影響
発注側は目的と予算の出所、測る指標を先に決める
旅行会社に相談する前に、三つを社内で固めておきたい。第一に目的である。優秀者の表彰なのか、新規事業の学びなのか、離職防止なのかで、行程も同行者も変わる。第二に予算の出所である。人事、経営企画、営業のどこが負担するかで、承認の流れと時期が決まる。第三に成果の指標である。受注額、研修後の提案件数、満足度など、旅行後に確認する数字を決めておく。
この三点を一枚の依頼書にまとめて複数社に渡せば、見積もりの比較もしやすくなる。目的が曖昧なまま依頼すると、見積もりは名所巡りに寄りやすい。逆に目的が明確なら、旅行会社も提案の質を上げられる。
見積もりの比較では専門ガイドと運営体制を確認する
同じ行き先でも、価格差の多くは人の配置から生まれる。専門ガイドの有無、現地スタッフの人数、トラブル時の連絡体制を、見積書で項目ごとに分けてもらうとよい。価格の安さだけで選ぶと、現地で追加費用が出ることもある。視察や研修を含むなら、訪問先との調整を誰が担うか、報告書や振り返り資料が付くかも確認したい。出張管理を任せる場合は、出張費のデータをどんな形で受け取れるかが重要になる。
旅行会社側は法人専用の窓口づくりから始められる
旅行会社や観光事業者にとっては、商品を増やす前に窓口を分ける工夫が参考になる。企業担当者が見るのは、観光地の写真より実績、進め方、安全管理の説明である。法人客の信頼は、事故が起きたときの対応で決まる面も大きい。中小の事業者でも、地域の工場や職人と組んだ小規模な視察なら、大手と違う強みを出せる。景気が悪化したときに備え、削られにくい出張管理などの業務も組み合わせておきたい。