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Travel Concierge Insight

治験の移動負担を減らす旅行支援が、参加者の脱落を防ぐ鍵になる理由

治験の移動負担を減らす旅行支援が、参加者の脱落を防ぐ鍵になる理由

ニュースの概要

臨床試験向けの技術を提供するSuvodaが、子会社Greenphireの旅行支援サービス「Greenphire Travel」を拡充した。治験参加者が通院や検査のために移動する際の負担を軽くする狙いである。40か国以上に配置した担当者が、24時間体制で個別に対応する。移動が単純な場合は、治験を行う施設が直接手配を依頼できる。一方、乗り継ぎが多い行程や、付き添いが必要な人、体調面の配慮が要る人などには、手配全体を一括で引き受ける担当者がつく。つまり、案件の難しさに応じて対応の濃さを変える二段構えの設計である。参加者が途中で辞めてしまう事態を、移動面から減らす試みといえる。

引用元: Suvoda、臨床試験参加者向けの旅行コンシェルジュ機能を拡張(Suvoda)

分析・見解

治験の脱落は、薬の効果より移動の重さで起きる

新薬の開発では、参加者を集めるだけでなく、最後まで続けてもらうことが大きな壁になる。治験は数週間から数年にわたり、定期的な来院を求める。専門施設は都市部に集まりやすく、地方や海外から通う人には、交通費の立て替えや宿の手配が重くのしかかる。業界では、治験の相当な割合が、目標の参加者数を確保できずに遅れるといわれる。薬の中身ではなく、通う手間が理由で脱落する人は少なくない。今回の発表は、その手間を専門のサービスで肩代わりするものだ。

簡単な旅は施設へ、難しい旅は専任者へ

今回の拡張で興味深いのは、手配の担い手を二つに分けた点である。単純な往復なら、治験施設の職員が画面から直接依頼できる。複雑な行程だけを、専任のコンシェルジュが丸ごと引き受ける。これは人手の使い方として合理的である。全員に手厚い対応を行えば費用が膨らむ。全員を機械的に処理すれば、車いすの利用者や小児の付き添い家族のような、例外的な事情が置き去りにされる。ホテル業界が会員ランクごとに対応の厚みを変えてきた発想と、よく似ている。

24時間対応が必要になる、治験ならではの事情

医療の現場では、予定が急に変わる。検査結果で来院日が前倒しになったり、体調不良で出発が遅れたりする。航空便が欠航すれば、薬の投与時刻に間に合わなくなるおそれもある。治験では投与や採血の時刻が厳密に決まっていることが多く、数時間の遅れがデータの価値を損なう場合がある。だから、夜間や週末にも動ける担当者が意味を持つ。40か国以上に拠点を置く点も、国際共同治験が増える流れに合う。複数の国で同時に進める試験が主流になり、現地の言葉と事情を知る担当者が欠かせなくなっている。

見落とされがちな視点:旅行業の新しい顧客は製薬側にある

私が注目するのは、この仕組みの本当の買い手が、旅行者本人ではなく製薬会社や治験受託会社だという点だ。旅費を払うのは依頼側で、使うのは参加者である。旅行業はこれまで、個人や企業の出張が主な顧客だった。ところが、参加者の定着率が上がれば、試験期間が縮み、開発費が下がる。旅行の質が、新薬の発売時期にまで影響する。観光や旅行の技術が、医療の収益構造に直接つながる珍しい例である。

ビジネスへの影響

旅行・宿泊事業者にとっての新しい販路

旅行会社やホテルにとって、治験関連の移動は安定した需要になりうる。観光の閑散期にも発生し、長期の連泊や繰り返しの利用が見込めるためだ。ただし、条件は厳しい。個人情報の扱い、車いす対応の客室、病院に近い立地、急な予約変更への柔軟さなどが問われる。こうした条件を満たす宿を一覧にして提供できれば、他社との差になる。まずは、自社が対応できる範囲を棚卸しすることから始めたい。

医療・製薬側が見直すべき費用の見方

製薬会社や治験を請け負う会社は、旅費を単なる経費ではなく、脱落を防ぐ投資として見直す時期にある。参加者一人を新たに集め直す費用は、移動の補助費用を大きく上回ることが多い。導入を考える際は、参加者の離脱理由を集計し、移動が原因の割合を把握するとよい。その数字があれば、手厚い支援の費用対効果を社内で説明しやすくなる。

導入前に確かめたい三つの点

実務では、次の三点を確認したい。第一に、対応できる国と言語の範囲。第二に、夜間の連絡が実際につながるか。第三に、参加者のプライバシーをどう守るか。旅程には病院名が含まれるため、扱いを誤れば病状が推測される。契約前に、情報の保管方法と閲覧できる人の範囲を文書で確認することが欠かせない。

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